不倫と呼ぶには

不倫と呼ぶには

第3話 化粧

夜勤に出る前、私は化粧ポーチを鞄に入れた。整骨院に行くだけなのに。すっぴんでいいことくらい、わかっていた。わかっていて、入れた。その夜は、看護師がひとりと、介護士の私。ふたりで、眠らない建物をあずかった。申し送りを受け、利用者を車椅子に移し...
不倫と呼ぶには

第2話 再診

翌日は、日勤だった。朝、布団から起き上がるのに、横向きになって、手をついて、息を止めた。それだけで額に汗がにじんだ。顔を洗い、髪をひとつに結んで、化粧をした。二階は、まだ静かだった。痛くて、最悪だった。それでも、行った。動けないわけではなか...
不倫と呼ぶには

第1話 予約メール

不倫の始まりが、ぎっくり腰だなんて。誰も思わないだろうし、私も思っていなかった。彼に最初に送ったのは、ラブレターなんかじゃない。整骨院の、予約メールだった。「本日、受診可能です」私はすぐに「伺います」と返信した。——たぶん、それがすべての始...